・・・ 日蓮はこの論旨を、いちいち諸経を引いて論証しつつ、清澄山の南面堂で、師僧、地頭、両親、法友ならびに大衆の面前で憶するところなく闡説し、「念仏無間。禅天魔。真言亡国。律国賊。既成の諸宗はことごとく堕地獄の因縁である」と宣言した。・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・これはこの表題の示すごとく、日本国語の根源が南洋にある事を論証し、従って国民祖先の大部分もまた南洋から渡来したものだと論断しようとするものである。この学説の当否についてはもちろん種々の議論があるであろうが、ここではもちろんそれは問題にしない・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・それ故に文学上に於ける感覚と云うものは、少くとも論証的でなく直感的なるが故に分らないものには絶対に分らない。これが先ず感覚の或る一つの特長だと煽動してもさして人々を誘惑するに適当した詭弁的独断のみとは云えなかろう。もしこれを疑うものがあれば・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・…… こういう論証は私をよい気持ちにした。私は彼と彼の一味との浅薄な醜さを快げに見おろした。そうして彼の永い間の努力と苦心と功績とを一切看過した。私はそこに自分の愛の狭さを感じる。この種の心持ちがしばしば他人の製作に対して起こっているの・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫