・・・ もう一つ問題になるのは、卓上演説があまりはやると、ついつい卓上気分を卓上以外に拡張するような習慣を助長して、卓上思想や卓上芸術の流行を見るようになりはしないかという事である。識者の一考を望みたい。 三 ラディオフォビア・・・ 寺田寅彦 「路傍の草」
・・・慊堂は昌平黌の教授で弘化元年に歿した事は識者の知る所。その略伝の如きはここに言わない。 隅田川を書するに江戸の文人は多く墨水または墨江の文字を用いている。その拠るところは『伊勢物語』に墨多あるいは墨田の文字を用いているにあるという。また・・・ 永井荷風 「向嶋」
・・・万々一もこの二流抱合の萌を現わすことあらば、文明の却歩は識者をまたずして知るべし。これすなわち禍の大なるものなり。国の文明を進めんとしてかえってこれを妨ぐるは、愛国者の不面目これよりはなはだしきはなかるべし。 論者つねにいわずや、一国の・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・ 小学教育の事 四 方今、世の識者が小学校の得失を論じ、その技芸の教授を先にして道徳の教を後にするを憂る者なきに非ず。たとえば、天文、地理、究理、化学等は技芸なり。孝悌忠信は道徳なり。究理化学を学び得るも、孝悌忠信の道・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・し、または寺僧を聘 また近時の日本にて、開国以来大に教育の風を改めて人心の変化したるは外国交際の刺衝に原因して、その迅速なること古今世界に無比と称するものなれども、なおかつ三十の星霜を費し、然かも識者の眼には今日の有様をもって変化の十分・・・ 福沢諭吉 「政事と教育と分離すべし」
・・・微妙深刻な形で、娘たちの家庭の苦しい経済事情と、時局国民精神総動員の声と、経営的手腕が複合して識者の眼に映ることは避け難い。教育当局が、若い女性に堅実な実務教育を希望しているのは事実であろうが、あながち十文字女史の方法を必ずしもよしとはしな・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・この映画が、現代小学校生活にふくまれている諸問題を真面目に率直に披瀝して識者の関心に訴えようとせず、画面の小奇麗さ、子供らの整然さだけに観衆の興味を限ろうとしているのは遺憾であった。 三巻の映画を眺めて行くうちに、もっとユーモアを! も・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
出典:青空文庫