・・・あまり国のと違っていない、議長席がある。鐸がある。水を入れた瓶がある。そこらも国のと違っていない。おれは右党の席を一しょう懸命注意して見た。 そしてこう決心した。「どうもこいつの方が信用が置けそうだ。この卓や腰掛が似ているように、ここに・・・ 著:ディモフオシップ 訳:森鴎外 「襟」
・・・当時の政客で○○○議長もしたことのあるK氏の夫人とその同伴者が波打際に坐り込んで砂浜を這上がる波頭に浴しているうちに大きな浪が来て、その引返す強い流れに引きずり落され急斜面の深みに陥って溺死した。名士の家族であっただけにそのニュースは郷里の・・・ 寺田寅彦 「海水浴」
・・・どういう事が問題になっているのか、肝心の事は分らなかったが、何でも議長が何かをどうかして、それからどうとかすべきはずなのを、そうしなかったのが不都合だと云って攻撃しているようであった。この人の出し得る極度の大きな声を出しているという事は、そ・・・ 寺田寅彦 「議会の印象」
・・・余は固より政党政治に無頓着な質であって、今の衆議院の議長は誰だったかねと聞いて友達から笑われたくらいの男だから、露西亜に議会があるかないかさえ知らない。したがってこの談話には何らの興味もなかった。それで、あんまり長いから、談話の途中で失敬し・・・ 夏目漱石 「長谷川君と余」
・・・「オツベルをやっつけよう」議長の象が高く叫ぶと、「おう、でかけよう。グララアガア、グララアガア。」みんながいちどに呼応する。 さあ、もうみんな、嵐のように林の中をなきぬけて、グララアガア、グララアガア、野原の方へとんで行く。どい・・・ 宮沢賢治 「オツベルと象」
・・・―― 一九一七年から一八――一九年と革命のパルチザンに参加し立派に村を白軍の蹂躙から守った五十歳の貧農ピョートルが村ソヴェトの議長に選ばれたとする。 議長席に坐る。鈴を振る。タワーリシチ! と演説する。――みんな出来るが、いざ、さあ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・舞台の赤布をかけた長テーブルの中央に、ニッケル・ベルを前にして、もう相当年配の静かな横顔の女議長がうつむいて何か書きつけている。左右、うしろ側の椅子に並んでるのも八割は党員らしい女だ。テーブルの端っこで速記してるコムソモールカがある。レーニ・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・革命直後、メイエルホリドが南露からモスクワへ帰って来て、教育人民委員会の演劇部議長になってから段々今日までやって来た仕事ぶりを見て、それはハッキリ云える。 ソヴェトの劇団を揺すぶりかえした有名なゴーゴリの「検察官」の全然新しい演出。失敗・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・しっかりとして、たくさんの苦労をしのいで来ていることが報告をよんでいる五十がらみのその顔つきににじみ出ている中国代表のツァイ・チャンや、作品でなじみのあるフランスのユージニ・コトンや副議長であるソヴェトのニナ・ポポヴァの立派さに加えて、これ・・・ 宮本百合子 「人間イヴの誕生」
・・・ 右手の粗末な数列の床几に、ドタ靴の委員たちがゾロリとかけ、新しい木や古い木をブッつけた台の上へ議長がのっている。 ┌────────────────────┐ │文学運動の基礎を全国の工場へ! 農村へ!│ └────・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫