・・・まずこの食糧の問題、労働賃金問題、インフレ問題は、一朝一夕に、てっとりばやい効果が示せないから、出来ることから早くやって、誰の目にも悪いとしか見えないところに掣肘を加えておくのは、賢明でしょう。闇の大親分が捕まった、料理店がしめられた、それ・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・ 男の労働者に比べて婦人労働者の賃金はどのくらいの割合いになっているものだろう。内閣統計局の統計によると、昭和十五年五月の平均に、金属工業で男三一二円手当賞与一五六円であるけれど、女は一二三円七〇銭手当賞与四一円一〇銭という違いで、実収・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
・・・しかし現実の生活で男女の労働賃金は同一でない。男女はひとしく選挙権も被選挙権もあるといってもその土台になる経済的・社会的生活のひとしさはまだまだ実現していない。労働組合や、すべての民主勢力が要求している賃金、待遇改善の問題、家事の社会化の実・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・然し青年賃金というものは存在する。生の愚弄ということはこのようにして私共の日々の細部に沁みこんでいる。封建制というものが私達の全力をあげて打ち破らなければならないものであるということはこの一つにさえ充分現われている。 私達は、自分の・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・現在十五歳から二十位迄の若い女を八万人ばかり働かし、その八一パーセントを寄宿舎に住わせ、手取二四八円九五銭――三〇四円九二銭の奴隷賃金でしぼっている業者はこの要望に対して早速生産低下で抵抗を示している。 日本資本主義は「女工哀史」の上に・・・ 宮本百合子 「その檻をひらけ」
・・・この期間日本中にストライキの波が高まり、賃金は上りました。ところが二月のゼネストの計画が流れたあと、何故組合内にいわゆる物とり主義に対する批判ということが始ったのでしょう。それにひきつづいて、組合活動における文化面の重要視がおこったのは何故・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ソヴェト同盟の労働者四割三分五厘というものは七時間労働で働き、しかも賃金は一九二八年から平均一割二分一厘の率で、諸君! 下ってるのではない。断然あがっているのだ。 では一体ソヴェト同盟では、いつから、どうして、そんな失業のない状態がはじ・・・ 宮本百合子 「なぜソヴェト同盟に失業がないか?」
・・・ 同一労働に対しては同一賃金をよこせ! と叫んで工場から溢れ出す。特別今年のメーデーは戦争のために起った物価騰貴、労働条件の悪化、いくら戦争をしても減らない三百万人の失業者の苦しみ、労働者農民を絞め殺す白テロに抗して、勇敢に闘われなければな・・・ 宮本百合子 「日本プロレタリア文化連盟『働く婦人』を守れ!」
・・・ですから職場の闘争で賃金の値上げをたたかいとったにしろ、その闘争の過程で自分が人民的な組織労働者としての人間的な体験を豊かにしたというような経験のし方をしないと、金がよけいとれても侘びしい、組合の闘争や政治教育が低くて経済主義的な活動にとど・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・先ずはじめの方に「賃金は月々に上昇し一年間にほとんど三倍以上になった。しかしそれと同時にヤミ価格も急激に上昇し、同じように一年間に三倍の上昇である」といわれている。こういわれると私たちは実に変な気がする。家計の苦しさは、千八百円ベースがある・・・ 宮本百合子 「ほうき一本」
出典:青空文庫