・・・麻雀賭博を学校の子供たちに教えてやっていたのです。たぶん、そんな事じゃないかと思っていました。ちょっと警察に行って来ます。(会釈(蹌踉僕も行く。だめ、だめ。あなたはもう、どだい、歩けやしませんよ。さ、行こう。奥田教師、学・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・ 主人公の老富豪が取引所の柱の陰に立って乾坤一擲の大賭博を進行させている最中に、従僕相手に五十銭玉一つのかけをするくだりがある。そのかけにも老主人が勝ってそうしてすまして相手の銭をさらって、さて悠々と強敵と手詰めの談判に出かけるところに・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・たとえばこれを懐中しているとトランプでもその他の賭博でも必勝を期することができるというのであったらしい。もちろんこの効験は偶然の方則に支配されるのである。「丸葉柳」のほうはどんな物だか、何に使うのか、それについては自分の記憶も知識も全然・・・ 寺田寅彦 「物売りの声」
・・・ 丁度その時、辮髪の支那兵たちは、物悲しく憂鬱な姿をしながら、地面に趺坐して閑雅な支那の賭博をしていた。しがない日傭人の兵隊たちは、戦争よりも飢餓を恐れて、獣のように悲しんでいた。そして彼らの上官たちは、頭に羽毛のついた帽子を被り、陣営・・・ 萩原朔太郎 「日清戦争異聞(原田重吉の夢)」
・・・○彼の二重性格者たる彼の生存の根本意志を象徴的に示すものとしての賭博ルーレットの赤と黒○「いたるところ、何事によらず、生涯私は限界をのりこえた」神と悪魔とに緊張せしめる、○ドストイェフスキーは決して規範を求めず、ただ充実をもつの・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・特別の技能を持たず、収入の途を図れない人々が落ちて行くところは闇商売であり、賭博である。 戦時中、あんなに「愛国心」に愬え「非常時の国民的良心」に愬え「新兵器としての婦人」を動員した戦争犯罪の支配者は、このようにして家庭から引離して集め・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・何故なら、ポーランド人の中にはいろいろな曖昧な職業に従事するものがひどく多いことは、昔、ドストイェフスキーの小説「賭博者」を読んだ時から知っている。ロシア人はこんな格言を持っている。 ――ポーランド人はなんにもない所から立派なズボンをこ・・・ 宮本百合子 「ワルシャワのメーデー」
出典:青空文庫