・・・そうして父なる太陽が赤道を北に越えて回帰線への旅を急ぐころになると、その帰りを予想する喜びに堪えないように浮き立って新しい緑の芽を吹き始める。 梅雨期が来ると一雨ごとに緑の毛氈が濃密になるのが、不注意なものの目にもきわ立って見える。静か・・・ 寺田寅彦 「芝刈り」
・・・大洋特に赤道下の大洋における蒸発作用の旺盛な有様を「詩」で云い現わしたと思えば、うまい云い方である。 寺田寅彦 「断片(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・ 赤道へ行っても実際は地球儀にかいてあるような線はどこにも存在しない。地図の上ではちがった絵の具でくっきりと塗り分けられた二つの国の国境へ行って見ても、杭が一本立ってるくらいのものである。人間のこしらえた境界線は大概その程度のものである・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・かけるときはきぃっとかけるんだ。赤道から北極まで大循環さえやるんだ。東京なんかよりいくらいいか知れない。」 耕一はまだ怒ってにぎりこぶしをにぎっていましたけれども又三郎は大機嫌でした。「北極の話聞かせなぃが。」一郎が又云いました。す・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
出典:青空文庫