・・・聖徒に向って鞭を加えたる非の恐しきは、鞭てるものの身に跳ね返る罰なきに、自らとその非を悔いたればなり。われを疑うアーサーの前に恥ずる心は、疑わぬアーサーの前に、わが罪を心のうちに鳴らすが如く痛からず。ギニヴィアは悚然として骨に徹する寒さを知・・・ 夏目漱石 「薤露行」
・・・あそごの水の跳ね返る処よ。」うん、いい早池峯山の七折の滝だってこんなのの大きなだけだろう。もうみんなおりる。おれもおりる。たった一人あとからやって来る人がある。こわそうだ。〔水の流れるところをあるくんです。水の流れる所を歩くんで・・・ 宮沢賢治 「台川」
・・・ がたがた馬車が、跳ね返る小馬に牽かれて駆けて往く。車台の上では二人の男、おかしなふうに身体を揺られている。そして車の中の一人の女はしかと両側を握って身体の揺れるのを防いでいる。 ゴーデルヴィルの市場は人畜入り乱れて大雑踏をきわめて・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
出典:青空文庫