・・・ 大局からこう考えてくると、現代日本の悲劇である殺人や強盗において、人民たるわれわれは、加害者も、日本の軍閥の被害者であるということがわかり、いってみれば被害者同士だといえる。しかし何んでもない動機で、チョット物がとりたくて人の首をしめ・・・ 宮本百合子 「戦争でこわされた人間性」
・・・そしてこの尾のうろこのかげにかくれて今日なお国民を破滅させた軍閥ののこりと反動の力がうごめいている。 そして近頃広く読まれている作家坂口安吾氏は、彼の人気あるデカダンスに封建性への反抗という理論づけをしている。偽善的な、形式的な、人の思・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・日本の天皇制権力とその軍閥は目前のドイツファシズムの勝利に誘惑されて野心を夢みはじめた。 執筆一月。朝の風。生活者としての成長。三月。昔の火事。五月。夜の若葉。十月。若き精神の成長を描く文学。昭和の十四年間。十・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・明治以来、満州や中国へいくたびも侵入して、さまざまの残虐行為を行いながら、海をわたって日本へかえってくれば、あの土地で行った悪虐ぶりは知らない顔で一等国になったと威張っていた日本軍閥――資本主義は、太平洋戦争の拡大された戦場の経験で、はじめ・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・そして、軍閥封建の日本で、どうして「源氏物語」ばかり世界に押出し、紫式部以後の日本の社会で婦人がどんなに生きて来ているか、婦人たちがどんな文化上の仕事をして来ているかということを人間の生活の発展の歴史として紹介しようとしなかったのでしょう。・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・ 中国の歴史がうつりかわるにつれて揚子江沿岸の軍閥が擡頭して、白人の事業を破滅に導き、それがやがて辛じて老父の屍を葬る二代目イーベンをせき立てて宜昌から遁走させる「偉大なスローガン」の怒号と高まって来るまで、作者は身についている揚子江航・・・ 宮本百合子 「「揚子江」」
・・・王龍とその妻阿蘭とが赤貧な農民としてあらあらしい自然と闘い、かつ社会の推移につれて偶然と努力との結果、次第に地方地主となりさらに押しすすむ時代の波にうたれて一族のある者は封建的な軍閥将軍に、ある者は近代中国資本主義の立役者になり、その孫のあ・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・それというのは、第一次ヨーロッパ大戦において、日本の財閥と軍閥とは儲けこそしたが痛手というような痛切な経験は一つもしていない。折を見て、連合国側にちょいと参加して、南洋の旧ドイツ領の委任統治地を稼いだし、青島に日本名で町名をつけることに成功・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫