・・・見るから浮薄らしい風の、軽躁な、徹頭徹尾虫の好かぬ男だ。私は顔を見るのもいやです。せっかく楽しみにしてここへ来たに、あの男のために興味索然という目に遇わされた。あんなものと交際して何の益がありましょう。あなたはまたどこがよくって、あんな男が・・・ 川上眉山 「書記官」
・・・ 今の風潮は、天下の学生を駆りてこれを政治に入らしむるものなるを、世の論者は、往々その原因を求めずして、ただ現在の事相に驚き、今の少年は不遜なり軽躁なり、漫に政治を談じて身の程を知らざる者なりとて、これを咎る者あれども、かりにその所言に・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・農を勧めんとして農業興らず、工商を導かんとして景気ふるわず、あるいは人心頑冥固陋に偏し、また、あるいは活溌軽躁に流るる等にて、これを見て堪え難きは、医師が患者の劇痛を見てこれを救わんとするの情に異ならざるべしといえども、これを救うの術は、た・・・ 福沢諭吉 「政事と教育と分離すべし」
『徳育如何』緒言 方今、世に教育論者あり。少年子弟の政治論に熱心なるを見て、軽躁不遜なりと称し、その罪を今の教育法に帰せんと欲するが如し。福沢先生その誣罔を弁じ、大いに論者の蒙を啓かんとて、教育論一篇を立案せ・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・文明の士人心匠巧みにして、自家の便利のためには、時に文林儒流の磊落を学び、軽躁浮薄、法外なる不品行を犯しながら、君子は細行を顧みずなど揚言して、以てその不品行を瞞着するの口実に用いんとする者なきにあらず。けだし支那流にいう磊落とはいかなる意・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
出典:青空文庫