-
・・・ ところが、ひとり、庄屋の娘で、楓というのが、歌のたしなみがあって、返歌をしたのが切っ掛けで、やがてねんごろめいて、今宵の氏神詣りにも、佐助は楓を連れ出していたのだ。 それだけに、悪口祭の「佐助どんのアバタ面」云々の一言は一層こたえ・・・
織田作之助
「猿飛佐助」
-
・・・の風春水や四条五条の橋の下梅散るや螺鈿こぼるゝ卓の上玉人の座右に開く椿かな梨の花月に書読む女あり閉帳の錦垂れたり春の夕折釘に烏帽子掛けたり春の宿 ある人に句を乞はれて返歌なき青女房よ春の暮 琴心挑美人・・・
正岡子規
「俳人蕪村」