・・・ 独で画を書いているといえば至極温順しく聞えるが、そのくせ自分ほど腕白者は同級生の中にないばかりか、校長が持て余して数々退校を以て嚇したのでも全校第一ということが分る。 全校第一腕白でも数学でも。しかるに天性好きな画では全校第一の名・・・ 国木田独歩 「画の悲み」
・・・ 梅ちゃんは十歳の年から世話になったが、卒業しないで退校ても先生別に止めもしなかった、今は弟の時坊が尋常二年で、先生の厄介になっている、宅へ帰ると甘えてしかたがないが学校では畏れている。 先生の中二階からはその屋根が少しばかりしか見・・・ 国木田独歩 「郊外」
・・・一人退校する、二人退校する、しまいに閉校する。……運命が逆まに回転するとこう行くものだ。可憐なる彼ら――可憐は取消そう二人とも可憐という柄ではない――エー不憫なる――憫然なる彼らはあくまでも困難と奮戦しようという決心でついに下宿を開業した。・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・とか「落」とか「同情及」とか「退校」とか書くのでした。 書かれる間学生はいかにもくすぐったそうに首をちぢめているのでした。書かれた学生は、いかにも気がかりらしく、そっと肩をすぼめて廊下まで出て、友達に読んで貰って、よろこんだり泣いたりす・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・二年のとき数学上の意見の違いで教師と争い退校させられてから、徴用でラバァウルの方へやられた。そして、ふたたび帰って帝大に入学したが、その入学には彼の才能を惜しんだある有力者の力が働いていたようだった。この間、栖方の家庭上にはこの若者を悩まし・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫