・・・文学作品そのものの側から云ってもし政治との連帯が生じるならば、それはまさしく作家の描く現実そのものが、その現実の中からこそ一定の政治を発生させているという、その社会的な事実において、初めて可能な現象なのである。〔一九四〇年十一月〕・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
・・・再び自分が夫とよぶことの出来る人を得るにつけても、自然な女の渇望と闘いながら、子供のために生きて行かなければならない人々の立場について、むしろ積極的に発言する一人として自分の女性としての連帯を忘れないでほしいと思います。 自分のかえり咲・・・ 宮本百合子 「未亡人への返事」
・・・職業組合やソヴェト保健省が、つまり解放されたプロレタリアート自身が、社会連帯によって強く次の時代を保護しているのだ。 九月×日。 電車の窓から一生懸命街の様子をのぞいて行く。というのは、別に珍しいものがあるわけではない。電車をどこで・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
・・・出征して再び還ることのなかった良人をもつ妻たちは、どんなに、自分たちの不安が社会全体の連帯保証によって守られ、自分が安心して助ける場面と、安心して遺児たちを育て終せる条件とを求めているだろう。戦災者・復員者たちは、日を経るにつれて骨肉を噛む・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫