・・・ 早苗の死、其に連関して全く消極の働きを起した老傅役の自殺、子義信の反乱が、信玄の心にどう影響したか。自分は其が知りたかった。其点がはっきりしてこそ、早苗が、只、敵方に騙り寄せられた城将の妻が古来幾度か繰返したような自裁を決行したのか、・・・ 宮本百合子 「印象」
・・・という文章の中に、偶然藤村氏の息子として生れ事毎に父との連関で観られなければならない一青年蓊助の語りつくされない錯綜した激しい感情をよみとった。ここには、父の肖像を描いて二科に出品した鶏二さんの心持とは恐らく異っているだろうと思われるものが・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・ そのルポルタージュの文章に書かれていた若い娘さんの感情の中心の据えどころを思いまわすと、私には、女は自分中心、といい古された言葉が浮んで、やはりそこに連関しているものがあるのを感じるのである。 妻の良人への情愛、それから母の子への・・・ 宮本百合子 「女の自分」
・・・いろいろの面から観察されることだろうが、私として頻りに考えられることは、そういう今日の傾向のなかで、科学知識と科学の精神という二つのものが、どんな工合に互の相異や連関を明らかにされて来ているのだろうかという点である。部分的にとりあげれば多極・・・ 宮本百合子 「科学の精神を」
・・・階級全体の発展が大なる困難におかれている時、彼女のように過去の生活において直接間接永い間大衆の力との密接な連関で作家としても正しく育って来た作家は、自身の作家生活の実態において今日の大衆の苦難を感じそれと闘っているのではあるまいか。『牡・・・ 宮本百合子 「窪川稲子のこと」
・・・何かそういう類の微妙な空気の状態が、蓮の開花と連関しているのかもしれない。その点から考えると、気温の最も低くなる明け方が、最も開花に都合のいい時刻であるかもしれない。しかしそれにしても、あの妙な音は何だろう。それを船頭にただしてみると、船頭・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
・・・が、これらの価値の間に一定の連関の存することは否み難いであろう。いわゆる「価値ある物」は何ほどかこの茸と同じき構造をもつと言ってよい。 和辻哲郎 「茸狩り」
・・・前後の連関から見て、他の作者なら単純に「……と言った」としてしまうところに、藤村はわざわざこの言い方を使っているのである。ところで、「言ってみせる」という言葉は、「言う」というのと同じ意味ではない。してみせるとか、着てみせるとかと同じように・・・ 和辻哲郎 「藤村の個性」
・・・その間に密接な連関の存することは察するに難くないであろう。 のみならず顔面のこのような作り方は無自覚的になされ得るものではない。顔面は人の表情の焦点であり、自然的な顔面の把捉は必ずこの表情に即しているのである。ことに能面の時代に先立つ鎌・・・ 和辻哲郎 「能面の様式」
・・・これもまた首の動作に連関して人形の構造そのものの中に重大な地位を占めている。人形使いはたとえば右肩をわずかに下げる運動によって肢体全体に女らしい柔軟さを与えることができる。逆に言えば肢体全体の動きが肩に集中しているのである。ところでこのよう・・・ 和辻哲郎 「文楽座の人形芝居」
出典:青空文庫