・・・出動部隊は近衛師団、第一師団のほか、地方の七こ師団以下合計九こ師団の歩兵聯隊にくわえて、騎兵、重砲兵、鉄道等の各聯隊、飛行隊の外、ほとんど全国の工兵大隊とで、総員五万一千、馬匹一万頭。それが全警備区に配分されて、配給や救護や、道路、橋の修理・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・まず一聯隊ぐらいの兵たいなら、すっかり腹の中へはいるくらいふくれます。」 ふとった男はこう言って、にたにた笑いながら、いきなりぷうぷうふくれ出して、またたく間に往来一ぱいにつかえるくらいの、大きな大きな大男になって見せました。王子はびっ・・・ 鈴木三重吉 「ぶくぶく長々火の目小僧」
・・・こんど前橋の連隊へ転任することになりました。お母さんによろしく、と簡単な通知である。将校さんだって、そんなに素晴らしい生活内容などは、期待できないけれど、でも、毎日毎日、厳酷に無駄なく起居するその規律がうらやましい。いつも身が、ちゃんちゃん・・・ 太宰治 「女生徒」
・・・夕食の少しまえに、私はすぐ近くの四十九聯隊の練兵場へ散歩に出て、二、三の犬が私のあとについてきて、いまにも踵をがぶりとやられはせぬかと生きた気もせず、けれども毎度のことであり、観念して無心平生を装い、ぱっと脱兎のごとく逃げたい衝動を懸命に抑・・・ 太宰治 「畜犬談」
・・・昨年、T君と見合いをして約婚したけれども、結納の直後にT君は応召になって東京の或る聯隊にはいった。私も、いちど軍服のT君と逢って三十分ほど話をした事がある。はきはきした、上品な青年であった。明日いよいよ戦地へ出発する事になった様子である。そ・・・ 太宰治 「東京八景」
・・・第三聯隊の砲車が先に出て陣地を占領してしまわなければ明日の戦いはできなかったのだ。そして終夜働いて、翌日はあの戦争。敵の砲弾、味方の砲弾がぐんぐんと厭な音を立てて頭の上を鳴って通った。九十度近い暑い日が脳天からじりじりと照りつけた。四時過ぎ・・・ 田山花袋 「一兵卒」
・・・当時、アメリカの民謡の曲を取った「ヒラ/\と連隊旗」という唱歌があったが、それを、もう一ぺんもじってこしらえたパロディーの戯歌がはやっていた。その歌詞の中には、先生の名も他の多くの先生がたと一度に槍玉にあげられていた。そうして「いざあばれ、・・・ 寺田寅彦 「田丸先生の追憶」
・・・×××の方の連隊へも夫々動員令下った。秋山さんは自分じゃもう如何しても戦に行くつもりで、服なども六七着も拵らえる。刀や馬具なども買込んで、いざと言えば何時でも出発が出来るように丁と準備が整えている。ところが秋山大尉は留守と来た。お前は前途有・・・ 徳田秋声 「躯」
・・・「第百二十八聯隊の伝令!」「どこへ行くか」「第五十聯隊 聯隊本部」 歩哨はスナイドル式の銃剣を、向こうの胸に斜めにつきつけたまま、その眼の光りようや顎のかたち、それから上着の袖の模様や靴のぐあい、いちいち詳しく調べます。・・・ 宮沢賢治 「ありときのこ」
・・・清二は遠方の連隊に入営した。働きてが一人減った。――しかしまあよい。同時に食う口も一つ減ったのだから。が、余りよくないことが、案外なところに潜んでいたのを、先ずおしまが発見し始めました。学問こそないが、おしまも女である以上、妙に鋭い、思い込・・・ 宮本百合子 「田舎風なヒューモレスク」
出典:青空文庫