・・・彼は国民服を着て、何か不安な面持ちで週刊雑誌を読んでいた。そしてふと顔を上げて、私を見ると、あわてて視線を外らした。 私の髪の歴史も以上で終りである。私の長髪にはささやかな青春の想い出が秘められていると書いたが、思えば青春などどこにもな・・・ 織田作之助 「髪」
・・・また最近にタイムス週刊の画報に出た、彼がキングス・カレッジで講演をしている横顔もちょっと変っている。顔面に対してかなり大きな角度をして突き出た三角形の大きな鼻が眼に付く。 アインシュタインは「芸術から受けるような精神的幸福は他の方面から・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ ずっと前に、週刊ロンドン・タイムスで、かの地の裁判所における刑事裁判の忠実な筆記が連載されているのを、時々読んでみたことがある。それはいかなる小説よりもおもしろく、いかなる修身書よりも身にしみ、またいかなる実用心理学教科書よりも人間の・・・ 寺田寅彦 「ニュース映画と新聞記事」
・・・ この必要に応ずる最も手近なものは、週刊、旬刊ないしは月刊の刊行物である。名前はやはり新聞でもそれはさしつかえないが、ともかくも現在の日刊新聞の短所と悪弊をなるべく除去して、しかもここに仮定した必要の知識を必要な程度まで供給する刊行物で・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・参議院の考査委員会は、永井隆氏を表彰しようという案を発表したが、六月十二日、七月三日の週刊朝日は、カソリック教徒であるこのひとの四つの著書が、それぞれにちがった筆者であるというようにいっている。 記録文学のあるものは、クラブチェンコの「・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・フランスの週刊雑誌『カンジット』はジイドをトロツキイストと呼んでいるということも肯ける。そして、これらのことはジイドがその前書の中で予見していたよりも深甚な反動としての影響を今日の人類の運命と文化の発達の上に明にマイナスなものとして、与えな・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・楕円形の大テーブルに、ソヴェト内地旅行案内のパンフレットや対外文化連絡協会の週刊雑誌などがきちんとならべてあった。 СССР地図を後にして一人のソヴェト的紳士がかけている。室の真ん中にタイプライターが一台おいてあり、それに向ってほっそり・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ いよいよ八月二十六日、週刊『婦人民主新聞』がおくり出されることになった。名目上の編輯人である櫛田ふきさんの活動は、不思議な忙しさをもってきた。毎朝、鷺宮から銀座裏へ出勤してくる櫛田さんの大きい手提袋の中には、のりと鍋と刷毛が入れられる・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
・・・『週刊朝日』で、高田保氏と対談している幸田文氏は、その意味のことをいっている。自分が女だもんだから女のことは大体わかるのでという風に。 わたしは、偶然、そのところをよんで、何となし考えこんだ。こんにち、ほんとに女のことのわかっているとい・・・ 宮本百合子 「人間イヴの誕生」
・・・ 周知のとおり通俗ニュース雑誌、『ライフ』『タイム』『フォーチューン』『アーキテクチュラル・フォラム』等の諸週刊雑誌のほかラジオ・ニュースの放送などで、今日三千万人のアメリカ人にタイム社の影響を与えている男である。 去年の彼の収入は・・・ 宮本百合子 「微妙な人間的交錯」
出典:青空文庫