・・・その後ある大学の運動会では余興の作りものの中にやはりこの煙突男のおどけた人形が喝采を博した。 こうしてこの肺病の一労働青年は日本じゅうの人気男となり、その波動はまたおそらく世界じゅうの新聞に伝わったのであろう。 この男のした事が何ゆ・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・ たしか二年のときであったと思うが、ある日、運動会のあった翌日だからというので、先生がたに交渉して休みにしてもらおうとした。ほかの先生はだいたい休みということになったが、物理の受け持ちの田丸先生はなかなか容易に承諾を与えられなかった。そ・・・ 寺田寅彦 「田丸先生の追憶」
・・・小学校の運動会に小さな手足の揃うすら心地好いものである。「一方に靡きそろひて花すゝき、風吹く時そ乱れざりける」で、事ある時などに国民の足並の綺麗に揃うのは、まことに余所目立派なものであろう。しかしながら当局者はよく記臆せなければならぬ、強制・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・ 子供の自分、××さんの原っぱの奥で、運動会があるというので見に行った覚えがある。日向の芝生に赤い小旗がヒラヒラしていた。あそこへ××さんの唖の息子も来ている。そう云って集っていた近所の人々は目ひき袖ひきした。 そこの家には三代唖の・・・ 宮本百合子 「犬三態」
・・・そういう大きい精神の飛躍を示すような声が響いている一方、あすこは本当に妙な女の気持が支配していて、女学校からずっと入って来た人が、外から入って来た生徒に、指導する権利をもっているような風があった。運動会か何かあるというとき、そういう一人の同・・・ 宮本百合子 「青春」
・・・の方法として取り上げた芝居、活動、運動会その他の催し物に対する感想のブチマケ合いや、お互いの職場の不平、台所の心配をうちあけながら、近くのストライキ、更に戦争、文化連盟に対する弾圧その他を不自然でなく話題に上せながら、今年のメーデーには婦人・・・ 宮本百合子 「メーデーに備えろ」
・・・如何にか成るまいかと思って、小さい彼女が大きな机を抱えて位置をなおすと、坐りもしないうちに、外では子供達の運動会が始る――。 我慢しても泰子は、つい不愉快にならずには居られなかった。「今日は如何うだった? 茂樹が五時頃帰って来て・・・ 宮本百合子 「われらの家」
出典:青空文庫