・・・フランスのように多くの古典を伝統として持っている国ですら、つねに古典への反逆が行われ、老大家のオルソドックスに飽き足らぬアヴァンギャルド運動から二百一人目の新人が飛び出すのではあるまいか。ジュリアン・バンダがフランス本国から近著した雑誌で、・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・「あまり勉強がすぎても身体に毒だから、運動がてらその辺の往来の馬糞を集めておいてくれ」といったようなことである。耕吉はそんな便りを聞くたびに、妻子の前へも面はゆい思いのされたが、苦笑にまぎらしているほかなかった。「お継母さんはあのとおり・・・ 葛西善蔵 「贋物」
・・・ ある窓では運動シャツを着た男がミシンを踏んでいた。屋根の上の闇のなかにたくさんの洗濯物らしいものが仄白く浮かんでいるのを見ると、それは洗濯屋の家らしく思われるのだった。またある一つの窓ではレシーヴァを耳に当てて一心にラジオを聴いている・・・ 梶井基次郎 「ある崖上の感情」
・・・ お政は痛ましく助は可愛く、父上は恋しく、懐かしく、母と妹は悪くもあり、痛ましくもあり、子供の時など思い起しては恋しくもあり、突然寄附金の事を思いだしては心配で堪らず、運動場に敷く小砂利のことまで考えだし、頭はぐらぐらして気は遠くなり、・・・ 国木田独歩 「酒中日記」
・・・ すなわち学校、孤児院の経営、雑誌の発行、あるいは社会運動、国民運動への献身、文学的精進、宗教的奉仕等をともにするのである。二つ夫婦そらうてひのきしんこれがだいいちものだねや これは天理教祖みき子の数え歌だ。子を・・・ 倉田百三 「愛の問題(夫婦愛)」
・・・それから彼等の小学校の先生だった六十三の、これも先生をやめてから、若い者よりももっと元気のある運動者となった藤井にあった。 どの顔にも元気がない。 組合が厳存していた時代の元気が、からきしなくなってしまっている。それに、西山が驚いた・・・ 黒島伝治 「鍬と鎌の五月」
・・・実際大噐晩成先生の在学態度は、その同窓間の無邪気な、言い換れば低級でかつ無意味な飲食の交際や、活溌な、言い換れば青年的勇気の漏洩に過ぎぬ運動遊戯の交際に外れることを除けば、何人にも非難さるべきところのない立派なものであった。で、自然と同窓生・・・ 幸田露伴 「観画談」
・・・革命運動などのような、もっとも熱烈な信念と意気と大胆と精力とを要するの事業は、ことに少壮の士に待たねばならぬ。古来の革命は、つねに青年の手によってなされたのである。維新の革命に参加してもっとも力のあった人びとは、当時みな二十代から三十代であ・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・娘はどうしても運動をやめようとはしません。私もあきらめてしまいました。それから直ぐ矢張り、又いなくなったのです。ところが今度は半年以上も、消息はありません。そうなると、私は馬鹿で毎日々々警察からの知らせを心待ちに待つようになりました。・・・ 小林多喜二 「疵」
・・・行く不破名古屋も這般のことたる国家問題に属すと異議なく連合策が行われ党派の色分けを言えば小春は赤お夏は萌黄の天鵞絨を鼻緒にしたる下駄の音荒々しく俊雄秋子が妻も籠れりわれも籠れる武蔵野へ一度にどっと示威運動の吶声座敷が座敷だけ秋子は先刻逃水「・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
出典:青空文庫