・・・こう論じてくると何だか学者は無用の長物のようにも見えるでしょうが私はけっしてそんな過激の説を抱いているものではありません。学者は無論有益のものであります。学者のやる統一、概括と云うものの御蔭で我々は日常どのくらい便宜を得ているか分りません。・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・等しく文を記して同一様の趣意を述ぶるにも、其文に優美高尚なるものあり、粗野過激なるものあり、直筆激論、時として有力なることなきに非ざれども、文に巧なる人が婉曲に筆を舞わして却て大に読者を感動せしめて、或る場合には俗に言う真綿で首を締めるの効・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・をもってするのみならず、患者の平生に持張して徐々に用うべき肝油・鉄剤をも、その処方を改めて鎮痛即効の物にかえんとするときは、強壮滋潤の目的を達すること能わずして、かえって鎮痛療法の過激なるに失し、全体の生力を損ずることあるべし。 ゆえに・・・ 福沢諭吉 「政事と教育と分離すべし」
・・・私は革命がそのような過激な手段によって達せられるものではないと考えている。」「われわれマルクス・レーニン主義の党は、働く大衆をもっとも愛し、その幸福をもっともよろこぶことができ、その不幸をもっとも悲しむことができる。働く大衆の一人を失う・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・ 一部過激学生の 反戦平和運動に利用されるからと云って。 内田祥三 宮本百合子 「東大での話の原稿」
・・・確に過激派だ」 すっかり理解が出来たと云うのではなくても、思って居たこと丈は兎に角云って、少しは心も溶けたと云う風を見、其日は帰った。 Aは、詰らない、何故そう判らないのか、と云って厭な顔をする。特に、彼にとっては、母が、陰で小細工・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・ リュシアンはp.82「ヴァンデックス輩と同じ思想をいだくほど、過激な正義心をもち合わせていない。なるほど アメリカへ行けばまことに正しい合理的この上ない仲間入りは出来るだろう。しかしそいつらには品がなくてしょっちゅうドルのこと・・・ 宮本百合子 「「緑の騎士」ノート」
・・・Goethe が小さいながら一国の国務大臣をしていたり、ずっと下って Disraeli が内閣に立って、帝国主義の政治をしたようなのは例外で、多くは過激な言論をしたり、不検束な挙動をしたりする。George Sand と Eugユウジェエヌ・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・父はただいわゆる過激思想だけを恐れているのではない。総じて人心の腐敗に対して公憤を抱いているのである。過激思想ももちろんその中に含まれているであろうが、過激思想を退治しようとしている為政者の言行といえどもまたその中に含まれていないのではない・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
・・・私は心からの涙に浸された先生の死のあとにそれとは相反な惨ましい死を迎えるはずであった。しかし先生の死の光景は私を興奮させた。私は過激な言葉をもって反対者を責め家族の苦しみを冒して、とうとう今日の正午に瀕死の病人を包みくるんだ幾重かの嘘を切っ・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
出典:青空文庫