・・・国郡のごとき行政区画のできるはるかに前から、火山の名が存し、それが顕著な目標として国郡名に適用されたであろうとは思われるが、これも確証することはむつかしい。 山の名の起原についてはそれぞれいろいろの伝説があり、また北海道の山名などではい・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・という古い諺は、私の場合には普通の解釈よりももう少し込み入った意味をもって適用されることになったようである。それで雷鳴のする度ごとに私は厭かずに空を眺めては雲の形態や運動、電光の形状、時間関係、雷鳴の音響の経過等を観察するのが無上の楽しみに・・・ 寺田寅彦 「家庭の人へ」
・・・人間の場合にこの理法がどういうふうに適用されるものか、それはわからない。しかし、妻子を食わせるために犠牲になって枯死する人間の多いことだけは事実である。しかし、結局人間でも昆虫でも植物でも、そうして死ぬることによって自分の生命を未来に延長さ・・・ 寺田寅彦 「沓掛より」
・・・思うに画と云う事に初心な彼は当時絵画における写生の必要を不折などから聞いて、それを一草一花の上にも実行しようと企てながら、彼が俳句の上ですでに悟入した同一方法を、この方面に向って適用する事を忘れたか、または適用する腕がなかったのであろう。・・・ 夏目漱石 「子規の画」
・・・lies と云うと有形的な物体に適用せらるる文字である。だから uneasy と読んで、どちらの uneasy かと迷う間もなく、直 lies と云う字に接続するからして uneasy の意味は明確になってくる。するとまたこう非難する人が出・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・されば今日、我が日本国の教育を蒙りたる学者は、とうてい殖産の社会に適用すべき者にあらず。殖産に不適当なる人物なれば、いかなる卓識の先生も、いかなる専門芸能の学士も、碁客将棋師に等しくして、とても一家の富を起すに足らず。一家富まざれば一国富む・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾学生諸氏に告ぐ」
・・・就中親族編の如きは、古来日本に行われたる家族道徳の主義を根底より破壊して更らに新主義を注入し、然かも之を居家処世の実際に適用す可しと言う非常の大変化にして、所謂世道人心の革命とも見る可きものなるに、其民法の草案は発布前より早く流布して広く世・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・この変てこな議論が一見菜食にだけ適用するように思われるのはそれは思う人がまだこの問題を真剣に考え真実に実行しなかった証拠であります。斯んなことはよくあるのです。 いくら連続していてもその両端では大分ちがっています。太陽スペクトルの七色を・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ながら興隆期にさしかかっていて、日本の中産階級が経済能力を増してきていた頃、福沢諭吉がいうとおり、今日のブルジョア民法としての民法改正が行われ封建差別がとりはらわれたのならば、たしかに今のままの条文を適用されるような親の財産も、夫の財産も、・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・こういう問題も、わたしたちは、人民の基本的人権の擁護とブルジョア的な法律適用による裁判が果して公正なものであるかどうかについての絶え間ない注目とを基礎にして、判断してゆく必要がある。参議院の引揚援護委員会も吉村隊事件ではいかがわしい委員会の・・・ 宮本百合子 「「委員会」のうつりかわり」
出典:青空文庫