・・・彼らは第四階級以外の階級者が発明した論理と、思想と、検察法とをもって、文芸的作品に臨み、労働文芸としからざるものとを選り分ける。私はそうした態度を採ることは断じてできない。 もし階級争闘というものが現代生活の核心をなすものであって、それ・・・ 有島武郎 「宣言一つ」
・・・よく考えてみると、これはやはり波が砂を選り分ける役をしているのです。水の底では波のために砂が絶えずおだてられているが、これが落ちる時は大きい粒のほうがいつでも早く落ちるから、長い間には大きいのはだんだん底になり、細かいのが上に残る事になる。・・・ 寺田寅彦 「夏の小半日」
・・・細君の品物を選り分ける顔つきや挙動や、それを黙って見ている主人の表情はさまざまである。いろいろな家庭の一面がここに反映している。いわゆる写実小説を見るよりはこのほうがはるかに興味があり、ためになる。同じ陳列台の前を行ったり来たりしている女の・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・里芋を選り分けるような工合に遣って行くのだ。兄きなんぞの前へ里芋の泥だらけな奴なんぞを出そうもんなら、かます籠め百姓の面へ敲き附けちまうだろうよ。」「己は化学者になって好かったよ。化学なんという奴は丁度己の性分に合っているよ。酸素や水素・・・ 森鴎外 「里芋の芽と不動の目」
出典:青空文庫