・・・酋長を囲んで相談し、収穫と生産とについて部族のしきたりと定めにしたがい、習慣をもって生と死の現象を扱った。定めは、種々の場合に変革をうけ、そこには苛酷な制裁や、意外の寛大があった。集団して生きる部族の政治は、ひとかたまりに生きてゆくやりかた・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・野を愛し、部族の生活を思い出し単純に、純朴にと一方の心は流れ囁く。而も、一方は無限の視覚、聴覚、味覚を以て細かく 細かく、鋭く 鋭くと生存を分解する、又組立てる。 考 創作をするにも種々な動機が・・・ 宮本百合子 「初夏(一九二二年)」
・・・今日、我々はどう考えても、ヘレナ一人のために、二つの部族と神々まで加えた戦争を惹起するような空想は、たとい一種のロマンスとしても実感を以て描くことが出来ないだろう。恋愛のいきさつは、人類の祖先が原始的生活を営んでいた時代、直に一集団の本能を・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
出典:青空文庫