・・・ 新聞で私達は玉砕と言われた前線部隊の人々が生還していることを度々読んだ。死んだと思われた人が生きて還って来るといえば私達の心は歓びで踊るように思う。然しその本人達は、そのような歓びを無邪気に感じていられただろうか。自分を死んだものとし・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・今日の世界は、社会の歴史を前進させ、不幸のより少い社会をつくるための悲痛にして名誉ある前衛大部隊として、諸民族の良人を失った妻たち、母たる妻たちの幾千万の発言を期待しているのである。〔一九四六年十二月〕・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・ ここに「北岸部隊」というものを書いた一人の作家があります。農村から、工場から、勤口から、学校から兵隊にされていっている人たちが、人間らしく悲しみ、人間らしく無邪気に歓び、死にさらされているありさまを目撃して、それを人々に伝えたい、とい・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ プロレタリア文学への新しい部隊養成の目的で、「ラップ」は三一年の正月から、新しい文学雑誌発行をもくろんでいる。 ところで最近の『文学新聞』は、党とともにソヴェトのプロレタリア作家たちが、次代の交代者である子供たちへの本気な関心につ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・だから、戦時中は小才のきく部隊長のような藤吉郎が清洲築城に活躍しても、よむ人は、逆に、やっぱり秀吉ほどの人物は、と、自分たちが非人間に扱われている現状に屈する方便に役立ってゆくのである。吉川英治は、青苔のついた封建の溝をつたわっている。こん・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・やっと婚礼の轎が門に入ったばかりの時、大部隊の兵が部落に乱入して来て、逃げ出した新夫婦は、二日目の夜馬賊に襲撃されて又逃げるとき、遂にちりぢりとなった。その時より四五年経った。彼女の几帳面さと清潔とを見出されて、或る西洋人の阿媽となったが、・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・その後労働者といい、無産者という一般的な社会層の中に、プロレタリアとして歴史を推進させてゆく自覚ある労働者部隊の革命的な任務が、はっきりさせられると一緒にプロレタリア文学は、アナーキストの権力否定の文学とも違うし、貧窮文学でもないし、下村千・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・そういう人間が集った一つの運動的な部隊としての価値が、ただ雑多な人間の寄せ集めの総和としてだけの価値を持つのでなく、別個のより高い価値を作り出すところにその運動の本質が備えている歴史的な新たな価値があった。従って、そういう運動に参加していた・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・急にカメラの角度がかわって、ひろ子たちの方へのしかかって来るように、その門の中からスクラムを組み、旗をかざし、解放された同志たちを先頭にした大部隊が進行して来た。真中に徳田、並んで志賀、その他ひろ子の顔も見分けられない幾人かの人たちが、笑い・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ 文学の大衆化ということについて真面目に念願する人々は、自然、現在の既成作家の大衆への愛に期待するよりもより分量の多い期待を、大衆の中から新しく生れ出て来ようとする文学に新部隊にかけざるを得ない心持だと思う。 今日まで、いつくか・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
出典:青空文庫