・・・人民は、自分の全生活について自分たちで判断・配慮し、分別してゆくことが、とりも直さず民主の政治の実体であることを学びつつあるのである。 この頃の毎日は、そういう意味で、日本の私たちにとって全く歴史的な日々となって来た。それだからこそ、一・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・もう、親は親の信念、子は子の信念で生活すべきもの、そして、その結果は、相互を結ぶ友愛から全く各自に責任を負うと同時に、互に苦しませないように、互に蹉跌を生じないようにと配慮して行く。全く、朗らかな人間的な交渉で過されて行くのです。 互い・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 物資の問題と家計の配慮は、特別女の日常には切実で、そのことでは、一般的な共感におかれているわけだが、文化のこととしてこの間の消息を眺めると、ここにも奇妙な現象がある。女子大学の家政科というようなところで、生計指導のための展覧会を行った・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
・・・その自覚に立って、社会全体の向上というひろい見地から婦人共通の福祉のために配慮し、協働し、それを実現して行かなければなりません。民主的な社会の建設ということの実体はここにこそあると思われます。精神に於ても肉体に於ても、一人一人の日本婦人のう・・・ 宮本百合子 「婦人民主クラブ趣意書」
・・・ 私の心持では、Aが、自分から進んで、其丈の配慮をしたことに、深い慶びを感じて居た。其だのに、彼方では一向、此方ほどの熱意を示して呉れない。半分、いやいや恩にきせたような母上の口吻を、自分は下等に感じた。彼女が自分の口から、来るな、会わ・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・デレンコフは配慮ぶかく明るい色の髯をひねりながら云った。「何とか考えなけりゃならない」 そして、罪ありげに微笑し、重々しく溜息をついた。ゴーリキイは、デレンコフが負っている重荷を見た。彼は一度ならず、いろいろな云いまわしでデレンコフ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ その点につきましても御配慮下さい。〔一九五〇年一―四月〕 宮本百合子 「「未亡人の手記」選後評」
・・・を動員した戦争犯罪の支配者は、このようにして家庭から引離して集めた人々にどういう配慮をしただろう。次の実話は決して例外唯一の場合でなかった。 或る大規模の軍需工場で、八月十五日即日傭員の解雇をした。平均五、六百円の金を貰ったところが、当・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・同じような配慮から、その年齢と代数とが組み合わされているのであったら、教えかたで、面白さのかんどころの掴みかたを先ずわからせて行かなければ、なかなか苦しい課目になると思う。女学校でも中学校でも三年生のときは、学校が一番辛い時代である。その辛・・・ 宮本百合子 「私の科学知識」
・・・その表現に際して虚偽を絶対に避けるためには、姙まれたものに対する極度の誠実と愛と配慮とがなくてはならぬ。――もともと姙まない者が、すなわち高い深い内生を、生命の沸騰を、持っていない者がそれを持っている者のごとくふるまい表現しようとするごとき・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
出典:青空文庫