・・・ 後年光琳の流れのなかで定式のようになった松の翠の笠のような形に重ねられる手法、画面の中央を悠々とうねり流れている厚い白い水の曲折、鮮やかな緑青で、全く様式化されながらどっしりと、とどこおるもののない量感で据えられた山の姿、それらは、宗達の・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
・・・頁から頁へと一つの印画から一つの印画へとそこに描こうとされた生活の各断面が十分の量感をもって展開されていて、そこからたちのぼって来る生活の息づきに、心持よく顔をふかれるような感じをうけた。 夏の或る日、畳まった町の屋根屋根を越してずーっ・・・ 宮本百合子 「ヴォルフの世界」
・・・ 夢の中で或る間隔を置いて並んで横になっていた私に感じられていた宮本の体の量感が、さめてのちもはっきりと私の横に残っている。深夜の天井を大きく見ひらいた目で眺めながら、私はその感じに沈んで寝ているのであったが、次第に強く感情を動かして来・・・ 宮本百合子 「日記」
・・・ 生活の実感は短波が日常に及ぼす速報につれて短時間に拡大し、複雑化し、手に負えないほどになっているのに、文学の創作方法は、その実感の大きさ、ひろさ、量感をそのままとらえて再現するだけに拡大されていない。ここに、こんにちの日本の文学の深刻・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・のもっている作品として体質がいかにもバックのアメリカの婦人であることを思わせる量感に溢れていることである。「母の肖像」もそのことでは極めて独自な生命にみちた興味ふかい作品であった。しかし、私たちの心をうつ今日の感想はバックが「大地」をかき得・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
出典:青空文庫