・・・ と面くらった身のまわり、はだかった懐中から、ずり落ちそうな菓子袋を、その時縁へ差置くと、鉄砲玉が、からからから。「号外、号外ッ、」と慌しく這身で追掛けて平手で横ざまにポンと払くと、ころりとかえるのを、こっちからも一ツ払いて、くるり・・・ 泉鏡花 「海異記」
・・・そしてひばりは鉄砲玉のように空へとびあがって鋭いみじかい歌をほんのちょっと歌ったのでした。 私は考えます。なぜひばりはうずのしゅげの銀毛の飛んで行った北の方へ飛ばなかったか、まっすぐに空の方へ飛んだか。 それはたしかに、二つのうずの・・・ 宮沢賢治 「おきなぐさ」
・・・くるっと立って鉄砲玉のように外へ走って出られました。そしてまっ白な雲の一杯に充ちた空に向って、大きな声で泣き出しました。まあどうしたのでしょう、と須利耶の奥さまが愕ろかれます。どうしたのだろう行ってみろ、と須利耶さまも気づかわれます。そこで・・・ 宮沢賢治 「雁の童子」
出典:青空文庫