・・・家は門地も正しいし、親譲りの資産も相当にある。詩酒の風流を恣にするには、こんな都合の好い身分はない。 実際また王生は、仲の好い友人の趙生と一しょに、自由な生活を送っていた。戯を聴きに行く事もある。博を打って暮らす事もある。あるいはまた一・・・ 芥川竜之介 「奇遇」
・・・そうして、この品位は単に門地階級から生ずる貴族的のものではない、半分は性情、半分は修養から来ているという事を悟った。しかもその修養のうちには、自制とか克己とかいういわゆる漢学者から受け襲いで、強いて己を矯めた痕迹がないと云う事を発見した。そ・・・ 夏目漱石 「長谷川君と余」
・・・第十二条に、「凡そ人は法の下に平等にして、人種、信条、性別、社会的地位、又は門地に依り政治的、経済的、社会的関係に於て差別をうくることなきこと」と明記されている。一方、人であって他の動物ではない天皇というものが、全く特殊な立場に固定され、そ・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・そこから私達が真面目に社会をよくしようとしている時に、ひょッと一枚の紙を読めば議会を解散させる権力のあるものがあるということ、しかも憲法草案はすべての人は法律の下において身分、門地その他によらず平等であると申しておりましょう。そうすれば人間・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・ 草案第十三条に「すべて国民は法の下に平等であって、人種・信条・性別・社会的身分・又は門地により政治的・経済的・又は社会的関係に於て差別を受けない。云々」とある。 なるほど、これは尤なことだとして読んだ私どもは、翻って、第一、天皇と・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
出典:青空文庫