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・・・』これがかれの開口第一のあいさつであった。自分が慇懃にあいさつする言葉を打ち消して、『いやそうあらたまれては困る。』かれは酒気を帯びていた。『これが土産だ。ほかに何にもない、そら! これを君にくれる、』と投げだしたのは短刀であった。自分・・・
国木田独歩
「まぼろし」
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・・・畑陸相が登壇すると、場内が俄にザワザワ、ガサガサいう音響に充たされて、畑陸相の開口を暫らく制する有様である。上から見下すと、只一様に白紙のように議席に置かれていたのは、参考地図であった。米内首相は降壇のときわざわざケースに納めて戻って来た眼・・・
宮本百合子
「待呆け議会風景」