・・・けちがえば互いの名を右や左や灰へ曲書き一里を千里と帰ったあくる夜千里を一里とまた出て来て顔合わせればそれで気が済む雛さま事罪のない遊びと歌川の内儀からが評判したりしがある夜会話の欠乏から容赦のない欠伸防ぎにお前と一番の仲よしはと俊雄が出した・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・にも地べたに寝て見せましたので、仲間からもほめられ、それがためにお金につまって質屋がよいが頻繁になりまして、印刷所のおかみさんと、れいの千葉県出身の攻撃の火の手はほとんど極度に達しまして、さすがに私も防ぎ切れず、とうとうその印刷所から逃げ出・・・ 太宰治 「男女同権」
・・・左手もて何やらんおそろしきものを防ぎ、右手もて、しっかと金嚢を掴んで居る。君、その役をどうか私にゆずってもらいたい。私、「日本浪曼派」を愛すること最も深く、また之を憎悪するの念もっとも高きものがあります故。冷酷ということについて・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・十人が、完全な統制のもとに、それぞれ適当なる部署について、そうしてあらかじめ考究され練習された方式に従って消火に従事することができれば、たとえ水道は止まってしまっても破壊消防の方法によって確実に延焼を防ぎ止めることができるであろうと思われる・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・八十人が、完全な統制の下に、それぞれ適当なる部署について、そうしてあらかじめ考究され練習された方式に従って消火に従事することが出来れば、たとえ水道は止まってしまっても破壊消防の方法によって確実に延焼を防ぎ止めることが出来るであろうと思われる・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・考えてみると請負師や大工に言ったくらいでねずみが防ぎきれるものならば大概の家にはねずみがいないはずである。しかし実際ねずみのいない家はまれであり、ねずみがいなくなると何かその家に不祥事が起こる前兆だという迷信があったりするくらいだから、少な・・・ 寺田寅彦 「ねずみと猫」
・・・一方では季題や去り嫌いや打ち越しなどに関する連句的制約をある程度まで導入して進行の沈滞を防ぎ楽章的な形式の斉整を保つと同時に、また映画の編集法連結法に関するいろいろの効果的様式を取り入れて一編の波瀾曲折を豊富にするという案である。 なん・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・て、そのために誤ってある程度以上に火流の前線を郭大せしめ、そうしてそれを十余メートルの烈風があおり立てたとしたら、現在の消防設備をもってしても、またたいていの広い火よけ街路の空間をもってしてもはたして防ぎ止められるかどうかはなはだ疑わしい。・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・衰えた身体を九十度の暑さに持て余したのはつい数日前の事のように思われたのに、もう血液の不充分な手足の末端は、障子や火鉢くらいで防ぎ切れない寒さに凍えるような冬が来た。そして私の失意や希望や意志とは全く無関係に歳末と正月が近づきやがて過ぎ去っ・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・かつまた、文脩まれば武備もしたがって起り、仏人、牆に鬩げども外その侮を禦ぎ、一夫も報国の大義を誤るなきは、けだしその大本、脩徳開知独立の文教にあり。今我邦に私塾を立つるも、この趣意を達せんとするなり。その得、五なり。 右所論の得失を概し・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
出典:青空文庫