・・・インフレ防止と言ってモラトリアムがしかれたが、私達の大部分は、モラトリアム公表の一日前に五十銭札で隠しておく二千円、三千円という金を持ってはいなかった。交通費は三倍になっている。米の値も味噌、醤油の値も三倍になっている。三十前の青年だといっ・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・ユネスコは中心題目として科学、教育、文化の上に平和と独立と自由とを確保して次の戦争を防止しようとする国際的組織です。 去る十二月二十日に行われた東京ユネスコ協力会発起人会で招請状を出した新居格氏は、ユネスコの本質上この会は会員の純潔な良・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・林弁護人は弁論中、彼らは「あくまで重要犯人であるとして被告人相互の連絡を防止するという意味で、窓には板をはり、わずかの硝子戸しかすきまがなく、ほとんど日のめをみることができない。また、一切の書物は刑務所備えつけのものすらよむ自由を与えなかっ・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・どんな男性が、どんな心情を抱いて接近して来るか、日本などより遙に多い危険が、女性自身の矜持で防止されているのです。 斯様にして交際しているうちに、多くの異性の中には、特に自分に興味を持ち、真実を抱いて来る者、又自らも抱く者が見出されて来・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 各会社の利潤統制から、社員の足どめ策もあって内部の福利施設が行われるようになって来ているそうだが、谷野せつ子氏が熱心に求めている健康保護、災害防止の設備はどの位改善されつつあるのだろうか。関係会社十六社、社員二十五万人の日産では、「む・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・電力不足、石炭不足、悪性インフレーション防止、円ブロックの問題の対策如何に。米のないこと、マッチのないこと、それはどう解決されるのであろうか、政府の方針を守って買い溜をしなかったものは今日物資に不自由し、命を守らずして買いだめしたものは、不・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・身売り防止会は、それらの田舎出の娘たちを一通り仕こんで方々の家へ女中として世話しているのであるが、その娘たちの心の中には、このとし子とは違うか、又全く同じような当惑や、型に入れぬ工合わるさがあるだろうし、多かれ少なかれ持っている田舎の朴訥さ・・・ 宮本百合子 「村からの娘」
・・・しかし青少年工、女子労働者のために特別な危険防止の施設というものは考えられなかった。その暇がなかった。しかし暇のないことよりも最大の原因は、日本の政府が人民の命をどんなに消耗品の一つとしてしか見ていなかったかということにある。『主婦之友』の・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫