・・・婦人雑誌の表紙や口絵が、働く女を様々に描いてのせる風潮だが、その内容は軍事美談や隣組物語のほかは大体やっぱり毛糸編物、つくろいもの、家庭療治の紹介などで、たとえば十一月の婦女界が、表紙に工場の遠景と婦人労働者の肖像をつけていて内容はというと・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・役所では、隣組や町会に国民調査をまかした結果として、この次は各自申告をさせる、と云っている。しかし、ただ調査のやりかたの不十分というばかりではないと思える。やはり根本には、総選挙というものが、わたしたち一人一人の生活の打開のために、どれほど・・・ 宮本百合子 「春遠し」
・・・町名、番地、隣組番号さえ重吉は知っている。その家に両親が暮していたとき、重吉も来たことさえある。だが、焼野原となった東京で、かえって来た重吉の心に、めじるしとして感じられたのは、昔の二階家であった。その家は、ひろ子の弟の家の北側が垣根一重の・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・そしてまた、そこに出入りし、同じ隣組に属す何倍かの人々は、心からその残念をわかち合わずにいられなかったと思う。 全波機は、二百円より五百円迄で製作販売されると云われたけれども、わたしが相談するどの専門家も、それで出来るとは保証してくれな・・・ 宮本百合子 「みのりを豊かに」
・・・しかし、その配給にしろ、昼間職場に働く主婦にとっては、いつもいつも気掛りな問題であったし、隣組の人達に気兼をしなければならない苦しい事情に立たされた。私たちがよく知っているとおり配給は決して朝早くや夜遅くは行われない。いつも昼前後、又は夕方・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・お婆さんは娘婿の家にいて、そこが隣組長をしているのであった。その計らいができて、きのことりのお婆さんは三合五勺を貰えることになった。お婆さんは手を合わせてよろこび、そのお礼にといろいろのきのこをこの秋はもって来てくれたそうだ。きのこを貰う側・・・ 宮本百合子 「私の感想」
出典:青空文庫