・・・そして“Line Composed a few miles above Tintern Abbey”の雄編に移った。この詩の意味は大略左のごとくである。 五年は経過せり。しかしてわれ今再びこの河畔に立ってその泉流の咽ぶを聴き、その危・・・ 国木田独歩 「小春」
・・・テニソンの『アイジルス』は優麗都雅の点において古今の雄篇たるのみならず性格の描写においても十九世紀の人間を古代の舞台に躍らせるようなかきぶりであるから、かかる短篇を草するには大に参考すべき長詩であるはいうまでもない。元来なら記憶を新たにする・・・ 夏目漱石 「薤露行」
・・・ 現にタイフーンのごときまた、舟火事のごときは単にタイフーンを写し、単に舟火事を写したものとして立派な雄篇である。首尾一貫前後相待って渾然と出来上がっている。なぜかと云うと、篇中に出て来る人間の心状、及び動作がことごとくタイフーンと舟火・・・ 夏目漱石 「コンラッドの描きたる自然について」
出典:青空文庫