・・・すると、直ぐ家へやって来てこんなに大衆的にやられている時に、遺族のものたちをバラ/\にして置いては悪いと云うので、即刻何処かの家を借りて、皆が集まり、お茶でも飲みながらお互いに元気をつけ合ったり、親密な気持を取り交わしたり、これからの連絡や・・・ 小林多喜二 「母たち」
・・・ 夏、家族全部三畳間に集まり、大にぎやか、大混乱の夕食をしたため、父はタオルでやたらに顔の汗を拭き、「めし食って大汗かくもげびた事、と柳多留にあったけれども、どうも、こんなに子供たちがうるさくては、いかにお上品なお父さんといえども、・・・ 太宰治 「桜桃」
・・・嵐のせいであろうか、或いは、貧しいともしびのせいであろうか、その夜は私たち同室の者四人が、越後獅子の蝋燭の火を中心にして集まり、久し振りで打ち解けた話を交した。「自由主義者ってのは、あれは、いったい何ですかね?」と、かっぽれは如何な・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・お父さんは、社交とかからは、およそ縁が遠いけれど、お母さんは、本当に気持のよい人たちの集まりを作る。二人とも違ったところを持っているけれど、お互いに、尊敬し合っていたらしい。醜いところの無い、美しい安らかな夫婦、とでも言うのであろうか。ああ・・・ 太宰治 「女生徒」
・・・ ちょっと考えると数学は純粋な論理の系統であり、語学は偶然なものの偶然な寄り集まりのように見える。前者には機械的な記憶などは全然不要であり、後者には方則も何もなく、ただ無条件にのみ込みさえすればよいように思われるかもしれないが、事実はい・・・ 寺田寅彦 「数学と語学」
・・・これらの経験的事実の集まり方はそれまでの歴史に無関係ではない。甲の事実は、乙丙の事実の発見を促す。しこうして乙が先に発見されるか丙が先に発見されるかによってその次に来る丙丁の事実の解釈を異にする場合は可能ではあるまいか。それはどうでもよいと・・・ 寺田寅彦 「物理学と感覚」
・・・市中があれほどヒッソリしているにかかわらず、時間が来さえすればこれほど多数の聴衆がお集まりになるのは偉い、よほど講演趣味の発達した所だろうと思われる。私もせっかく東京からわざわざ出て来たものでありますから、なろうことならば講演趣味の最も発達・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・実際この暑いのにこうお集まりになって竹の皮へ包んだ寿司のように押し合っていてはたまりますまい。また講演者の方でも周囲前後左右から出る人の息だけでも――ちょっとここへ立って御覧になればすぐ分りますが――実際容易なものではありません。実はこうい・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
・・・ あるいは一人と一人との私交なれば、近く接して交情をまっとうするの例もなきに非ざれども、その人、相集まりて種族を成し、この種族と、かの種族と相交わるにいたりては、此彼遠く離れて精神を局外に置き遠方より視察するに非ざれば、他の真情を判断し・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・第四に人々相集まりて一国一社会を成し、互いに公利を謀り共益を起こし、力の及ぶだけを尽してその社会の安全幸福を求むること。この四ヶ条の仕事をよくして十分に快楽を覚ゆるは論を俟たずといえども、今また別に求むべきの快楽あり。その快楽とは何ぞや。月・・・ 福沢諭吉 「家庭習慣の教えを論ず」
出典:青空文庫