・・・死ぬほどいやと思っても親同士が結納の取引をしてしまえば無理やり嫁に行かなければならなかったし、離婚も出来なかった。 ことに農民の婦人の生活はひどく、全くただ働く道具としてだけ考えられた。字を読むことも書くことも知らず、辛い心の訴えどころ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の婦人と選挙」
・・・ 彼等は、日本の婦人が全く奴隷的境遇に甘じ、良人は放蕩をしようが、自分を離婚で脅かそうが、只管犠牲の覚悟で仕えている。そして、自分の良人を呼ぶのにさえその名を云わず“Our master”と呼ぶ、と云ったと仮定します。 これを見た日・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・世界に資本主義の生産と経済が発達するにつれて個人の権利は主張されて近代資本主義社会の機構の範囲で民主的な国々では、社会における男女の等しい権利とともに、その恋愛や結婚、離婚、互の愛への責任としての貞潔に対する同じ責任と義務とを見るようになっ・・・ 宮本百合子 「貞操について」
・・・例えば、民主的な社会の特長である徹底した男女同権が実現されれば、そして勤労に対する報酬も、能力を発揮する機会も、婦人にとって全く男と同等になれば、その結果結婚を望む婦人が減って、離婚も増し、家庭というものが崩潰するだろうという見通しを語る人・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・夏、離婚した。長篇「伸子」の第一部「聴き分けられぬ跫音」を書き、『改造』へのせた。一九二五年「伸子」を三、四度にくぎって『改造』へ連載。他に「吠える」「長崎紀行」「白い翼」などを書いた。一九二六年・・・ 宮本百合子 「年譜」
ソヴェト・ロシアでは、結婚にしても離婚にしてもとても自由です。自由と云っても、ブルジョア的な自由ではない。子供に対しては、勿論、お互に責任を持たねばなりません。 私たちの結婚は、結婚とか、恋愛とか、そう云うものを、・・・ 宮本百合子 「働く婦人の結婚と恋愛」
・・・ けれども、結果は悪く、三年同棲する間に、女性がその良人に対して持ち得る極限の侮蔑と、恥と憤とを味って離婚してしまいました。 生活の安全、幸福と云うものは、只、金でだけ保障されると思って媒妁人は、心から彼女の為を計って、却って、富の・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・結婚の自由もあるようになりました。離婚の問題も婦人に不利であった条件を、男子と同等なものにしようとされていますし、刑法の上で、特に婦人にだけきびしかった姦通罪が消滅しました。 その中心にまだ天皇一族の特権をひろく認めているような憲法が、・・・ 宮本百合子 「婦人大会にお集りの皆様へ」
・・・についても、民法の条文を引用して、離婚が「女大学」にいわれているような条件で成り立つべきでないことを説明している。益軒の「女大学」は、あらゆるところで、女は夫に仕えて云々という表現をしているのだが、福沢諭吉の開化の心は、主従関係、身分の高下・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・三 ナポレオンはジェーエーブローの条約を締結してオーストリアから凱旋すると、彼の糟糠の妻ジョセフィヌを離婚した。そうして、彼はフランスの皇帝の権威を完全に確立せんがため新しき皇妃、十八歳のマリア・ルイザを彼の敵国オーストリア・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
出典:青空文庫