・・・母と自分との関係など、難しい、辛いものは少なかろう。 彼女は、彼女自身の悦び希望を以て、私を、小さい時から、芸術的傾向に進ませた。そして、いよいよ少しはものになりかけ、自覚、良心が芽生えて来ると、私と彼女との芸術観の深さ、直接性に著しい・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・答「好き嫌いということになると、大へんに内容が綜合的なものだからなかなか難しいけれど、どの作家が女を書くだろうかといえば、そうネ、菊池寛さんなんかがさっきいったような微妙な限界性の範囲内ではいきいきと金持の娘や奥さんや事務員などを書かれ・・・ 宮本百合子 「不満と希望」
・・・ 自分を狂人と思うことは、なかなか人にはこれは難しいことである。そうではないと思うよりは、難しいことであると梶は思った。それにしても、いまも梶には分らぬことが一つあった。人間は誰でも少しは狂人を自分の中に持っているものだという名言は、忘・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫