・・・酒色を好まず、出たらめを云わず、身を処するに清白なる事、僕などとは雲泥の差なり。同室同級の藤岡蔵六も、やはり謹厳の士なりしが、これは謹厳すぎる憾なきにあらず。「待合のフンクティオネンは何だね?」などと屡僕を困らせしものはこの藤岡蔵六なり。藤・・・ 芥川竜之介 「恒藤恭氏」
・・・亀井さんの御主人は、本当にまめで、うちの主人とは雲泥の差だ。 お菓子をいただいて玄関先で失礼した。 それから郵便局に行き、「新潮」の原稿料六十五円を受け取って、市場に行ってみた。相変らず、品が乏しい。やっぱり、また、烏賊と目刺を買う・・・ 太宰治 「十二月八日」
・・・これらの選び方によって効果には雲泥の差が生じるのである。 いかなる材料のいかなる撮影が効果的であるかを判断するためには映画家は「カメラの目」をもつことが必要である。プドーフキンは爆発の光景を現わすのに本物のダイナマイトの爆発を撮ってみた・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・鯉はマナイタの上にのせられると動かなくなるといわれているが、それは覚悟を定めての上で、ドンコのようにどうされるのか知らないのとは、精神に雲泥の差がある。 河豚も醜魚だが、ドンコもあんまり恰好がよいとはいえない。しかし、味はなかなかよくサ・・・ 火野葦平 「ゲテ魚好き」
出典:青空文庫