・・・が、その一面プロレタリア文化団体は、小林多喜二の死によってうけた震撼と恐慌によって崩壊を早めつつあった。文学団体が機関誌さえも順調に刊行できず、団体解散の理由を、直接治安維持法の暴力によるものと明言し得ないで、指導者と指導理論の批判に藉口す・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
・・・ヨーロッパの天地は再び震撼しはじめているが、この前のように盲目の狂暴に陥るまいとする努力は到るところに見られており、男に代って社会活動の各部署についた婦人たちも、二十五年昔よりは高められている技能とともに単純なヒロイズムにのぼせていないもの・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・空襲がはじまってから、どういうレイダアのお告げだったのか、藤堂さんのところに先ず爆弾がおちて、ほんの僅かの距離しかないうちのゆずり葉の下の壕にかがんでいた私を震撼させた。次の月には焼夷弾が落ちて、全焼してしまった。その火の粉は、うちの屋根に・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・かく停ってしまう扇風機をもって土蔵の半地下室に向う低い窓から、必死に新しい空気を息子のために送ろうと努めた状況は、その手紙に生々しく描かれていて、遙な土地と新しい社会の空気の中にあって、それを読む娘を震撼させた。涙をふいては読み、読んでは涙・・・ 宮本百合子 「父の手紙」
・・・が世界的な、震撼的な出来事だということは理解した。が、彼女はどんな大衆的行動にも、歴史的な市街戦にも参加しなかった。革命は彼女の「わきを通り過ぎた」。「十月」はそんな工合にあらわれたとしても、それに引きつづいてすぐソヴェト同盟の建設とい・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・もっと後になって、ゴーリキイの知った祖母の生涯の終の有様は彼を震撼した。二人の従兄弟と子もちのその妹――健康な若い者ども――が祖母の首にかかり、彼女の集めた施物によって食っていたのであった。八つの時ゴーリキイが、五哥、十哥を稼いでやった、そ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・の価値及び一般急進的インテリゲンツィアの任務に加えた評価は、褒むべきであったが、彼のその気持は一九一七年の一大画期に於て、再びレーニンと対立するような結果を導き出した。 ゴーリキイは、「十月」の震撼的高揚の後にも「大衆の理解力は依然とし・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ 世界を震撼させた「十月」がロシアに来た。 レーニンを指導者とするこの偉大で困難きわまるプロレタリア革命の時期に、小市民出身であり、自身率直に告白している通り「怪しげなマルクシスト」であったゴーリキイは、きわめて複雑な経験をした・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・読者の内に新しい疑問をかき立てて、その人間が鏡をとって改めて自分の顔を見直さずにおられない程の不安を点火したり、その人の営んでいる今日の生活の底が、ああ破れてしまったと感じさせる程の震撼を与えることもない。山本有三氏の作品を読むと、人々は作・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・ 世界を震撼させた「十月」がやがて来た。 ゴーリキイは、当時自分の主宰していた『新生活』紙上で、この新しい人類の世紀の正しい理解をひろめるために、又、レーニンに対する逆宣伝を破るために精力的な活動を惜まなかった。彼は人民委員会の顧問・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫