・・・が少しも錯覚のないものであったら、ヒトラーもレーニンもただの人間であり、A一A事件もB一B事件も起こらず、三原山もにぎわわず、婦人雑誌は特種を失い、学問の自由などという言葉も雲消霧散するのではないかという気がする。しかしそうなってははなはだ・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・とにかくこうなるとせっかくの最初の空想も雲消霧散して残るものは世智辛い苦々しい現実である。それにしてもこの「商売」が一体どのくらいの収入になるものか、今度逢ったら思い切って一つ聞いてみてやろうと思っている。同じ「感傷」を売り付けるにしても小・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
出典:青空文庫