・・・私から見れば青二才だ。私がもし居らなかったらあの人は、もう、とうの昔、あの無能でとんまの弟子たちと、どこかの野原でのたれ死していたに違いない。「狐には穴あり、鳥には塒、されども人の子には枕するところ無し」それ、それ、それだ。ちゃんと白状して・・・ 太宰治 「駈込み訴え」
・・・日本もはや明治となって四十何年、維新の立者多くは墓になり、当年の書生青二才も、福々しい元老もしくは分別臭い中老になった。彼らは老いた。日本も成長した。子供でない、大分大人になった。明治の初年に狂気のごとく駈足で来た日本も、いつの間にか足もと・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・「青二才奴! よくもやりやがったな。サア今度は覚悟を決めて来い」「オイ、兄弟俺はお前と喧嘩する気はないよ。俺は思い違いをしていたんだ。悪かったよ」「何だ! 思い違いだと。糞面白くもねえ。何を思い違えたんだい」「お前等三人は俺・・・ 葉山嘉樹 「淫賣婦」
出典:青空文庫