・・・ 一万九千円を握っただけで能事足れりとするような、けちな肚ならともかく、いくら何でも、そんな非合法な、かつ信用に関するような真似は、お前がやりたくても、おれがやらなかった。 そんな悪辣な手段ばかり弄さなかった証拠には、第一期の支店長・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・共産党員をスパイにつかって、共産党を非合法に追いこむためにさまざまな挑発をおこなってきたことが判明しました。 こんにちの商業新聞は、スクープさえ自由にできない状態におかれています。千葉のファシスト組織のことが一行でもかかれた新聞があった・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・当時の生活は、時間的に寸断されていた上に、一つの作品を完成させるに必要な作者の一貫した生活気分が合法生活と非合法生活との間にわけられていて、それ自身一つの客観な一つの世界としてかたちづくられなければならない作品はまとまらなかった。 この・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・三田村たちが非合法活動の方便に名をかりて、放蕩していたことはすべての文献にのこっている。今日封建性に反対するという名目で私たちの間に性的な放恣がないであろうか。インフレーションはたれの経済生活をもうちこわしている。インフレーションに名をかり・・・ 宮本百合子 「共産党とモラル」
・・・左翼の思想や行動は、ついこの間までは非合法とされていた。このことは、思想そのものが非合法であり、行動そのものが非合法の本質をもっているということとはまったく異っている。人間の思想と行動とが、ほんとうに非合法であるといえるのは、それが健全な人・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・「――非合法出版物へ書いてるじゃないか」「知らない」「だァって」 中川はさも確信ありげに顎でしゃくうように笑って、「現に君から原稿を貰った人間があるんだから仕様がないじゃないか」「……そりゃ今の世の中には、いろんな種・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・一ヵ月あまりののち、プロレタリア文化団体に対する全面的弾圧がはじまって、四月七日、顕治は非合法生活に入り、百合子は検挙された。そういう事情のために百合子の入籍手続がおくれていた。[自注6]壺井さん、栄さん――壺井栄。[自注7]島田の・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・昔のプロレタリア文学運動の時代は、日本のすべての解放運動が非合法におかれていたために、たとえば『戦旗』は階級的な文化の文学雑誌であるとともに、その半面では労働者階級の経済、政治の国際的な啓蒙誌でもあった。『ナップ』『プロレタリア文学』もそれ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ むかし社会主義の思想と運動が治安維持法によって極端に弾圧されていた時代、日本共産党が非合法な政党としてひどい目にあわされていた時代、運動に入って困難な闘いを続けている若い男女の同志が世間態は人なみの家庭生活をしなければならないために、・・・ 宮本百合子 「社会生活の純潔性」
・・・ 第一日の公判廷は、十一名の被告が一人一人たってその一人一人が、取調べの過程で検事が云ったことを具体的にあげてその非合法的なやりかたの不当をはげしく訴え、全法廷が公訴取消を要求する声々でいっぱいになって「遂に起訴状朗読には至らず」閉廷し・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
出典:青空文庫