・・・ 我々及び我々の背後に永劫の未来に瞑る幾多数うべくもあらぬ人の群は、皆大いなるものの面をみにくき仮面もて被い、其を本来の面差しと思いあやまって見ると云う痛ましい事実を抱いて居る。 何物を以ても抗し得ぬ時代の潮に今日も明日もとただよい・・・ 宮本百合子 「大いなるもの」
・・・ それから二三日は何の変りもなくって退屈に立って行ったが、五日目に七度二分に熱(った時には、皆がもう生き返った様な面差しになって、「もう大丈夫ですよ、ええ。 チブスなら、どんな事があったって今頃下るって云う事はないのです。・・・ 宮本百合子 「黒馬車」
・・・ 私には、今日でもまだ其の少年の其那に高くはない、然し立派に明瞭な声や熱心な面差しを思い出す事が出来ます。何故その少年は其那にも私の心を動したのでしょう、私は、彼の一生懸命さと真面目さだと思います。私は決して、皆さんが停車場の広場で、白・・・ 宮本百合子 「私の見た米国の少年」
出典:青空文庫