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・・・ 信仰に頒布する、当山、本尊のお札を捧げた三宝を傍に、硯箱を控えて、硯の朱の方に筆を染めつつ、お米は提灯に瞳を凝らして、眉を描くように染めている。「――きっと思いついた、初路さんの糸塚に手向けて帰ろう。赤蜻蛉――尾を銜えたのを是・・・
泉鏡花
「縷紅新草」
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・・・千部七五〇法というような割引率で、数万を頒布している」。 ジイドの「感覚の玄人」の腕に魅せられた人々は、今猶上に引いた序文の言葉の魔術や、八方からの反撃にかかわらずジイドが飽くまで真理を追究しようとしている態度という架想に陥って、人類の・・・
宮本百合子
「今日の文学の展望」