頤が落ちる
1 寒くて震え上がるさま。「寒きこといとわりなく、頤など落ちぬべきを」〈枕・二九八〉 2 食べ物が非常にうまいことのたとえ。あごが落ちる。「—・つるやうな」〈虎寛狂・附子〉 3 口数が多いことのたとえ。多弁である。「舌の吊り緒、頤の落つる程、こっちからもしゃべる、あっちからもしゃべる」〈浄・栬狩剣本地〉
頤で蠅を追う
「顎 (あご) で蠅を追う」に同じ。「朝夕の供御を参らずは、—・うて御ざらう」〈虎寛狂・牛馬〉
頤で人を使う
「顎 (あご) で使う」に同じ。
頤を利く
「頤 (おとがい) を叩 (たた) く」に同じ。「まだ—・きをるかと、頰桁 (ほほげた) 三つ四つくらはせて」〈浄・大経師〉
頤を叩く
盛んにしゃべることをののしっていう言葉。つべこべ言う。「何の顔 (つら) の皮でがやがや—・く、恥をしれやい」〈浄・盛衰記〉
頤を解く
《「漢書」匡衡伝から》あごを外すほど大きな口を開けて笑う。大笑いをする。「いまだその詞を出ださざるに、万人の—・く」〈新猿楽記〉
頤を養う
1 生計を立てる。 2 養ってやる。他人の生活の面倒をみてやる。「ながなが—・うてゐた此の、此の、此の顔が立たぬか」〈浄・浪花鑑〉
おとがいのしずく【頤の雫】
《下あごについたしずくを飲むことはできないところから》手近にありながら、自分の思うようにならないことのたとえ。「見るもの食はうあだ思ひ、是 (これ) —なり」〈浄・袂の白絞〉
おとがいきん【頤筋】
《「オトガイ筋」と書く》表情筋の一つ。下顎骨の側切歯の部分から起こり、オトガイ部の皮膚につく。オトガイ部の皮膚を引き上げ、梅干の種のようなしわをつくる。
おとがいさんかくきん【頤三角筋】
《「オトガイ三角筋」と書く》⇒口角下制筋