・・・ 以上は新春の屠蘇機嫌からいささか脱線したような気味ではあるが、昨年中頻発した天災を想うにつけても、改まる年の初めの今日の日に向後百年の将来のため災害防禦に関する一学究の痴人の夢のような無理な望みを腹一杯に述べてみるのも無用ではないであ・・・ 寺田寅彦 「新春偶語」
・・・ 一家のうちでも、どうかすると、直接の因果関係の考えられないようないろいろな不幸が頻発することがある。すると人はきっと何かしら神秘的な因果応報の作用を想像して祈祷や厄払いの他力にすがろうとする。国土に災禍の続起する場合にも同様である。し・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・あって、人間の外部と内部とを引裂いているかの如き働きをなしつつ、恰も人間の活動をしてそれが全く偶然的に、突発的に起って来るかの如き観を呈せしめている近代人というものは、まことに通俗小説内における偶然の頻発と同様に、われわれにとって興味溢れた・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 北九州の小・中学校の先生たちは、昨年六月二十五日以来、青少年の窃盗事件の頻発に悩んでいる。クズ鉄の価がはね上った。子供たちは、工場の地べたにおかれているクズ鉄、クズでない鉄、手あたり次第に、ひろって来るようになった。アルバイトの一種の・・・ 宮本百合子 「修身」
出典:青空文庫