・・・「それから? それから? ええ? それから?」と言うのでした。 耕助は顔を赤くしてしばらく考えてからやっと答えました。「風車もぶっこわさな。」 すると三郎はこんどこそはまるで飛び上がって笑ってしまいました。みんなも笑いました・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・しまいは猫はまるで風車のようにぐるぐるぐるぐるゴーシュをまわりました。 ゴーシュもすこしぐるぐるして来ましたので、「さあこれで許してやるぞ」と云いながらようようやめました。 すると猫もけろりとして「先生、こんやの演奏はどうか・・・ 宮沢賢治 「セロ弾きのゴーシュ」
・・・そして、風車で霧をこしらえて、小さな虹を飛ばして遊ぼうではありませんか。」 ポウセ童子はやっと気がついて、びっくりして笛を置いて云いました。「あ、チュンセさん。失礼いたしました。もうすっかり明るくなったんですね。僕今すぐ沓をはきます・・・ 宮沢賢治 「双子の星」
・・・と「町から風車場へ」など、フランスの婦人作家に珍しい純朴な美しい作品をかいた。 このように、孤児のお針さんであった人が、小説も書くようになったということにはフランスの社会のどこにかある民衆の文化性の高さ、ゆたかさが思われる。マルグリット・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・ 赤坊が風車を廻されて驚き、舌出し三番の舌を見て泣き出すと同じ等(な驚きをし泣き方をして居ます。 ほんとうに動かされたくない。 けれ共又そうかと云って、世の中のどんな事でも平気になって仕舞って、ニヤニヤ嘲笑いながら苦しんで居る者・・・ 宮本百合子 「動かされないと云う事」
・・・は粉挽小舎だが、小舎のうしろの二つの風車は、粉をひくためばかりに廻っているのではない。舞台の上の劇的感情の高揚につれ、赤い大きい風車はグルリと舞台の上でまわり出し、遺憾なく波だつ感情の動的な、視覚的表現の役に立てられている。―― メイエ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ 書簡註。風車・乾草・小川は秋空をうつして流れている。農婦は赤い水汲桶を左右にかついで小川に向って来る。画中の女、戦の勝敗を知らず。 書簡註。この頃シベリアは郵便物が通れず通信すべてアメリカ経由で・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・住民たちは、侵略の恐ろしい暴力とたたかったのであったが、このたびの第二次世界戦争においても、豊かに波だつ麦畑と、それを粉に挽く風車の故に、ウクライナ自治共和国は渾身の力をふるって敵に当らなければならなかった。 ウクライナの村々から、男は・・・ 宮本百合子 「よもの眺め」
出典:青空文庫