・・・寒い時は之に限りますからね、一串は奥さんに、一串は我々にという事にしていただきましょうか、それから、おい誰か、林檎を持っていた奴があったな、惜しまずに奥さんに差し上げろ、インドといってあれは飛び切り香り高い林檎だ。」 私がお茶を持って客・・・ 太宰治 「饗応夫人」
・・・よし一つや二つ何か立派などっしりした物があったにしても、古今に通じて世界第一無類飛切りとして誇るには足りないような気がする。然らば何をか最も無類飛切りとしようか。貧乏臭い間の抜けた生活のちょっとした処に可笑味面白味を見出して戯れ遊ぶ俳句、川・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・第一の精霊 サテサテマア、何と云うあったかな事だ、飛切りにアポロー殿が上機嫌だと見えるワ。日影がホラ、チラチラと笑って御ざる。第二の精霊 アポロー殿が上機嫌になりゃ私共までいや、世の中のすべてのものが上機嫌じゃがその中にたっ・・・ 宮本百合子 「葦笛(一幕)」
・・・ 演出は決して飛び切りとはいえなかった。でも、我々には二重に或るものを遺して行った。一つは「検察官」とは正反対の性質をもった作品の一列として桜の園は翻訳ではほとんど生命を失うものだ。桜の園の髄を貫いているのは、現在のロシアにおいては過去・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
出典:青空文庫