・・・すると、日本帝国主義は軍隊をさしむけ、飛行機、山砲、照明砲、爆弾等の精鋭な武器で蕃人たちを殺戮しようとした。その蕃人征伐に使われたのも兵士たちだ。 兵士たちは、こういう植民地の労働者を殺戮するために使われ、植民地を帝国主義ブルジョアジー・・・ 黒島伝治 「入営する青年たちは何をなすべきか」
・・・ 俺だちはお互に起床のときと、就寝のときと、飛行機が来たときと、元気なときと、クシャンとしたときと、そして「われ/\の旗日」のときに壁を打ち合った。――ブルジョワ階級が色んな「旗日」を持っているのと同様に、もはや今では日本のプロレタリア・・・ 小林多喜二 「独房」
・・・それで二日の午前に、まず第一に陸軍から、大橋特務曹長操縦、林少尉同乗で、天候の観測をするよゆうもなく、冒険的に日光へ飛行機をかり、御用邸の上をせんかいしながら、「両陛下が御安泰にいらせられるなら旗をふって合図をされたい」としたためたかきつけ・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・ 緒方サンニハ、子供サンガアッタネ。 秋ニナルト、肌ガカワイテ、ナツカシイワネ。 飛行機ハ、秋ガ一バンイイノデスヨ。 これもなんだか意味がよくわからぬが、秋の会話を盗み聞きして、そのまま書きとめて置いたものらしい。 また・・・ 太宰治 「ア、秋」
・・・ 夫はからだが弱いので、召集からも徴用からものがれ、無事に毎日、雑誌社に通勤していたのですが、戦争がはげしくなって、私たちの住んでいるこの郊外の町に、飛行機の製作工場などがあるおかげで、家のすぐ近くにもひんぴんと爆弾が降って来て、とうと・・・ 太宰治 「おさん」
・・・企図した人は、すべて無慙に失敗し、少し飛び上りそうになっては墜落し、世人には山師のように言われ、まるでダヴィンチの飛行機の如く嘲笑せられているのです。けれども自分は信じています。真の近代芸術は、いつの日か一群の天才たちに依って必ず立派に創成・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・と言ったのに、現に飛行機ができたではないかという人があらばそれは見当ちがいの弁難である。現在でも将来でも鳥のように翼を自分の力で動かして、ただそれだけで鳥のように翔ける事はできはしない。 すべての案内者も時々これに類した誤解から起こる非・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・これは自分が平常はなはだ遺憾に思っている次第である、日本がアメリカに負けているのは必ずしも飛行機だけではないのである。このひけ目を取り返すには次のジェネレーションの自覚に期待するよりほかに全く望みはないように見える。 六・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・ 長い間縁の切れていた活動映画が再び自分の日常生活の上におりおり投射されるようになったのがつい近ごろのことである。飛行機から爆弾を投下する光景や繋留気球が燃え落ちる場面があるというので自分の目下の研究の参考までにと見に行ったのが「ウィン・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・しかし車の響、風の音、人の声、ラヂオ、飛行機、蓄音器、さまざまの物音に遮られて、滅多にわたくしの耳には達しない。 わたくしの家は崖の上に立っている。裏窓から西北の方に山王と氷川の森が見えるので、冬の中西北の富士おろしが吹きつづくと、崖の・・・ 永井荷風 「鐘の声」
出典:青空文庫