・・・近頃流行る飛行機でもその通りで、いろいろ学理的に考えた結果、こういう風に羽翼を附けてこういうように飛ばせば飛ばぬはずはないと見込がついた上でさて雛形を拵えて飛ばして見ればはたして飛ぶ。飛ぶことは飛ぶので一応安心はするようなもののそれに自分が・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・この方面からいえば時間距離なんていう考はありません。飛行機――飛行機のような早いものの必要もなく、堅牢なものの必要もなく、数でこなす必要もない。生涯にたった一つだっていいものを書けばいいのです。即ち私どもとあなた方とはかく反対になっているの・・・ 夏目漱石 「無題」
・・・然らざれば、飛行機なくして、戦に臨むと択ぶ所がない。私は東洋文化の根柢に論理があると考えるものである。而してそれは今日の科学の基礎とも結合するものと思う。「論理と数理」の論文において触れた如く、私は推論式というものが、固、真の矛盾的自己同一・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・ ジャックハムマーも、ライナーも、十台の飛行機が低空飛行をでも為ているように、素晴らしい勢で圧搾空気を、ルブから吹き出した。 コムプレッサーでは、ゲージは九十封度に昇っていた。だから、鑿岩機の能率は良かった。「おい、早仕舞にしよ・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・「ええと、カマジン国の飛行機、プハラを襲うと。なるほどえらいね。これはたいへんだ。まあしかし、ここまでは来ないから大丈夫だ。ええと、ツェねずみの行くえ不明。ツェねずみというのはあの意地わるだな。こいつはおもしろい。 天井裏街一番地、・・・ 宮沢賢治 「クねずみ」
・・・ 小さい子供は「日本にも飛行機がある?」ときいて、大きい子に笑われたりした。またもっともっと、政治的な大人らしい質問をしたものも沢山あります。 日本にも「子供の家」がある? ときかれて、実に私は感慨無量だった。 ブルジョアの子は・・・ 宮本百合子 「従妹への手紙」
・・・空では数台の飛行機が分列式を行っている。 赤いプラカートの波! 波! 波! 丁度目の前を製糸工場、赤いバラの労働婦人群が通過するところである。女を台所から解放しろ!生産経済計画を実現しろ!五ヵ年計画を四年で!・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・そこを、ゆるゆる地平線に向って滑走中の飛行機のようなコンバインが進行している。 古貨車を利用してこしらえた農業労働者のキャンプのわきには、炊事車が湯気を立てている最中だ。 婦人労働者の派手な桃色のスカートが、炎天のキャンプの入口にヒ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・見ていると、大空から急降下爆撃で垂直に下って来た新飛行機は、栖方の眼前で、空中分解をし、ずぼりと海中へ突き込んだそのまま、尽く死んでしまった。 また別の話で、ラバァウルへ行く飛行中、操縦席からサンドウィッチを差し出してくれたときのこと、・・・ 横光利一 「微笑」
・・・しかし我々の前の十年は、汽車、汽船、電信、電話、特に自動車の発達によって、我々の生活をほとんど一変した。飛行機、潜航艇等が戦術の上に著しい変化をもたらしたのもわずかこの十年以来のことである。その他百千の新発明、新機運。それが未曾有の素早さで・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫