・・・四 あるとき、南の方の国から、香具師が入ってきました。なにか北の国へいって、珍しいものを探して、それをば南の国へ持っていって、金をもうけようというのであります。 香具師は、どこから聞き込んできたものか、または、いつ娘の姿・・・ 小川未明 「赤いろうそくと人魚」
・・・四 ある時、南の方の国から、香具師が入って来ました。何か北の国へ行って、珍らしいものを探して、それをば南の方の国へ持って行って金を儲けようというのであります。 香具師は、何処から聞き込んで来ましたか、または、いつ娘の姿を・・・ 小川未明 「赤い蝋燭と人魚」
・・・などと言えば、香具師めくが、やはりここはあくまでこの言葉でなくてはならぬ。それほど、なにからなにまで香具師の流儀だったのだ。 だいいち、服装からして違う。随分凝ったもんだ。一行三人いずれも白い帷子を着て、おまけに背中には「南無妙法蓮華経・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・が、この男はまだ芸術家になりきらぬ中、香具師一流の望に任せて、安直に素張らしい大仏を造ったことがある。それも製作技術の智慧からではあるが、丸太を組み、割竹を編み、紙を貼り、色を傅けて、インチキ大仏のその眼の孔から安房上総まで見ゆるほどなのを・・・ 幸田露伴 「鵞鳥」
・・・ 詐欺師や香具師の品玉やテクニックには『永代蔵』に狼の黒焼や閻魔鳥や便覧坊があり、対馬行の煙草の話では不正な輸出商の奸策を喝破しているなど現代と比べてもなかなか面白い。『胸算用』には「仕かけ山伏」が「祈り最中に御幣ゆるぎ出、ともし火かす・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
出典:青空文庫