・・・ 人と人との真心のこもったいたわり、饒舌でない思いやり、骨惜しみない扶け合い、そういうものが新しい結婚や家庭の生活にますますゆたかにされなければならず、そういう潤沢なあふれる心は、つまり今日の波濤の間で私たちの明日が不測であるからこそ、・・・ 宮本百合子 「家庭創造の情熱」
・・・そして、この迂遠にして古い大道を行き貫くためには、日本の作家には男にしろ女にしろ特別にたゆみない智慧と堅忍と骨惜しみなさが求められているとも思う。日本にしかない種々の条件は日々の現実の中で常に必しも芸術をのばすものとしてばかりはないからであ・・・ 宮本百合子 「人生の共感」
・・・櫛田さんの骨惜しみをしない忠実さ、よい主婦、きちんとした母親らしい仕事ぶりが、全く不如意で物も人手もたりないづくしのクラブの事務に大きいプラスとなった。 三 クラブが出発した半年後に、『婦人民主新聞』が発行・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
・・・更にこれをさかのぼれば、生活に肉薄した作家の常に正気を失わぬ眼力、人間の幸福に向っての骨惜しみをしない努力とそのための価値の探求・発見の態度にかかっている。あるままを素直に感受する敏感さと、驚きもよろこびも疑問をも活々と感じ得る慧智と、人間・・・ 宮本百合子 「文学の流れ」
・・・それがございましたので、初めただ骨惜しみをしない、親切な同宿だと存じていました豊干さんを、わたくしどもが大切にいたすようになりました。するとある日ふいと出て行ってしまわれました」「それはどういうことがあったのですか」「全く不思議なこ・・・ 森鴎外 「寒山拾得」
出典:青空文庫