・・・ 彼の失敗した演説にもかかわらず、農村における力の高揚はむこうから組織をとらえに来る。「やま連」のグループが北村清吉を代表として部落委員会らしいものを組織する話をもち出してくるのであるが、この月夜の晩、彼プロレタリア作家の心は「この一言・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・封建の思惟をロマンティックな作者の精神高揚でつつんだものであった。「阿部一族」では、そのようなロマンティックな要素も作品の一つの色彩とはしつつ、作者はぐっとリアリスティックに心理と経済の事情にまで広く多岐に踏みこんで、一人の君主の死が、・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・とこの大森氏の感想文とをあわせ読み、私は、日本における左翼運動が、世界独特な高揚と敗北の過程をとっている、その一般的な歴史的素因の複雑さを、裏からはっきりと、透して見せられたように感じた。何故なら、石坂氏が一プロレタリア作家牧野に最大限の階・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・ 三 圧迫下のパリ時代 一八四〇年代のパリは、歴史的な革命高揚の時期であった。リオンの絹織工が大規模のストライキを行ったのにつづいて、ブランキーの反抗があり、急速に発展した資本主義の矛盾に対して勤労階級の反抗が・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・だから、科学というとすぐ理智的ということでばかり受けとって科学を扱う人間がそこに献身してゆく情熱、よろこびと苦痛との堅忍、美しさへの感動が人間感情のどんなに高揚された姿であるのも若い女のひとのこころを直接にうたない場合が多い。このことは逆な・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・社会が自由と解放を求める高揚した雰囲気の中で、良人カールとともに、朝から夜まで勤労しながら、ぬけきれない不幸に置かれている多数の人々が、生きるためにどう闘っているかということを目撃しているケーテ、そして、その感情をともに感情としているケーテ・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・ 社会主義の社会で民族は真の意味で自立し、新しい生産と文化とが結びつきながら高揚し、調和しあうものとして動きはじめている。ハリコフ市はそういう点から一つの新しい民族首都である。ここを選んで国際的な革命作家の会議が行われたことは輝かしい。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・そのことも自分たちの高揚した気分からだけされているのでないことは、十分察せられる。生活ということがそこでも考えられている。 刻々の推移の中で、人間らしい生活を見失うまいとする若い男女の結合が、今日の新しい結婚の相貌であるということは、日・・・ 宮本百合子 「これから結婚する人の心持」
・・・しかし、作家に成長があるとすれば、畢竟はこの自身のコムプレックスと死力をつくしてもみ合って、それを最大の可能へまで昂揚拡大させ、表現してゆくその「変って」ゆく道しかないのであろうと思う。 車善六の作者が、作家として持っている複雑なコムプ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・重な反省から目を逸らさせ、真面目な再吟味の根気を失わせられたことは、それらの作家たちが過去において率直に傾け示した自身の努力、人間的善意の価値に自信を失わせる結果となり、従って、プロレタリア文学運動の高揚と退潮とに至る多岐な数年間の経験から・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫